年末年始歴史ツアー日本の古都で国際交流

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年末年始歴史ツアー近畿編日本の古都で国際交流

 私は31日の天の橋立YHで『風のたより』のみんなと 私は31日の天の橋立YHで『風のたより』のみんなと合流した。 YHに着くなり、  三苫さんが抹茶を立ててくれ、自作の湯飲みでごちそうしてくれる。 98年最後の日に泊まったYHには、ブラジルからやってきたサッカーの先生、ラモスと、イギリスからやってきた英会話ジオスの先生、ジュリーがいた。
みな、あやしげな英語で、強引に国際交流をはかる。話しが盛り上がるにつれ、日本酒の一升瓶が次々と空になってゆく。
 23時45分、YHの人たちと、近くの真名井神社へ向かう頃には、雨はみぞれへと変わり、『風のたより』のお酒を愛する人々は、すっかり酔っぱらいと化していた。
「クレイジードリンカー!」
ジュリーは酒飲み曽原君のことをそう呼ぶようになった。見事なお手前で抹茶をたててくれた三苫さんは「ティーレディー」こっちの方とはえらい違いだ。

 みぞれの中、神社はたくさんの参拝客でごった返していた。12時が近づくにつれて、ざわめきはますます大きくなってくる。
なぜか佐藤さんは野良犬の遠吠えをしている。久保君は叫ぶし、もう何がなんだかわからないうちに、神社の太鼓が鳴り響き、年が明けた。とりあえずお参りを済ませてから、さてっ、と御神酒をもらいにゆく。今年の干支、ウサギの姿が彫ってあるお皿は、飲んだ後、記念に持って帰れるのだ。が、『風のたより』の酔っぱらい連中はそれだけではあきたらず、持参の一升瓶からなみなみとお酒をそそいでは、何杯もお代わりするのだった。

 お酒の後はおみくじである。おみくじといえば、真瀬君だ。彼は98年中7回続けて大吉をひいたという強運おみくじ男なのである。。8回目の大吉なるか? みんながさわぎたてる中、彼はおそるおそる「恋みくじ」というのを引いた。
彼の手がふるえているのは、緊張の為であろうか? 寒さの為であろうか? じつは、真瀬君は年末にいいことがあったらしい。が、皆にさんざん、
「大吉の有効期間は98年までだからなぁ」
と、脅されていた。これで凶でも出たら、年末になって、やっと掴みかけた真瀬君の幸福はどうなってしまうのであろうか・・・。
真瀬君の顔がゆるんだ。
彼が誇らしく皆に差し出した恋みくじには「大吉」と書かれていた。
おまけに
「運命の人の出会った二人はもう離れられないでしょう」なんて書いてある。
うれしさにこわれまくる真瀬君であった。
ラモスとジュリーもおみくじをひく。
「あー、あなたは中吉、んー、ミドル・グッドねぇ。あ、あなた小吉?
 リトル・グッドリトル・グッド」
みんなで寄ってたかって、実にいいかげんな教え方をする。
YHに帰ってからも、年越しの夜はなかなか終わらないのであった。

『風のたより』隊・天の橋立へ行く

翌日は、ジュリーも一緒に天の橋立を見物する。去年の年末ツアーでは一時間と間をあけずに日本酒を飲みまくってい曽原君が、めずらしいことに、
「もう・・・夜まで酒はいい・・・」
と、力なくお茶などを飲んでいる。うーん、ソハラーも年だなぁ。寄る年波には勝てんよなぁ。なんて言ったら、
「僕、ハタチだよっ」
と、無駄な抵抗をするのは目に見えているので、まぁ、何も言わないでおこう。
しかし、ソハラーよ。悲しむことはない。君に変わって、『風のたより』には強力な酒飲みが現れたのだから。

アレクサンドル・ウォッカスキーこと、相波君である。彼は、白い肌、彫りの深い顔立ち、高い身長を持つ、中島みゆきが好きな、ニセロシア人である。彼がロシア人に酷似しているのは容貌だけではない。ツアー中、いつも、手にした一升瓶をラッパ飲みしながら歩いている彼の肝臓は、ウォッカ一気飲みで鍛えられたものと思われる。おまけに彼はニガテな物が多く、牡蠣・人参・キノコ・セロリいろんなものが食べられない。
しかし、酒飲みには珍しく、辛い物だけでなく甘い物も大好きという。
時に彼は、片手に一升瓶、片手にドーナツを持って歩いていた。
ロシア人の嗜好は理解しがたい。
 ロープウェイに乗り、天の橋立が一望に見渡せる傘松公園へ向かう。
ここで足の間から橋立を見ると、景色が逆さになって天に橋がかかっている様に見えるのだという。天の橋立というから、私は海にでっかい橋がかかっているのだとおもっていたが、さにあらず、海の真ん中に中州の様な道ができていて、岸と岸を結んでいるのだった。ここは日本三景と呼ばれている。この中道は、海岸に松並木が、いかにも日本の名所といった感じで美しい。
「大江山 いく野の道の遠ければ まだふみも見ず 天の橋立」
まさにこの歌の雰囲気にぴったりだ。
 展望台で、土井君が持ってきた巨大キーボードがやっと日の目をみることになった。歌い、踊っているうちに、とてもいい声がする。
そちらを見ると、いつの間にか観光客の女性の人が輪に加わって歌っていた。彼女は歌の先生なんだそうだ。

 次は、伊根という集落に向かう。伊根の家は、海の上に建っていて、一階が駐車場じゃなくて、駐船場とでも言うんですかね、漁船を入れる様になっている。これなら、窓から魚釣りができるし、コンビニ感覚でふらっと船に乗って夕食の魚を手に入れたりできそうである。なかなか魅力的な家だ。
元旦の町はのんびり静かで、昔風の家並みを見ながら細いくねくね道を歩いていると、なんだか田舎のおばあちゃんちにでも遊びに来た様な気持ちになる。

 松浦武四郎記念館の学芸員をしている武馬さんが、武四郎伝を執筆中の佐藤さんと盛り上がっている。武馬さんの歴史の知識は、佐藤さんでも舌を捲くくらいすごいのである。彼女は今回『風のたより』ツアー初参加だったが、とても気さくで親しみやすい人だ。

ダジャレは国境を越えるか?

温泉に入り、YH行きのバスを待つ。
寒い。
あたたまった体もたちまち1月の冷気にさらされてしまう。バス停には小さい待合い場所があるだけだ。
仕方ないので、その狭い待合室に全員が、乗車率120パーセント状態で入ってしまう。 外から見ると真っ暗で何も見えないが、こんな狭い所に14人もの人間がつまっているのがわかったら、ずいぶんコワイにちがいない。
なぜか佐藤さんが
「ギャグ大会をしよう!」
と、唐突に言いだす。
「ジュリーにも分かるようにインターナショナルなギャグね。ふと
んが吹っ飛んだなんていうのはダメ」
「じゃ、猫がねころんだも?」
「もちろん却下!」
しかし、いつもくだらないダジャレばかりが幅をきかせている『風のたより』なので、急に高尚なギャグなんて思い浮かばない。あまりにくだらないダジャレばかりが飛び出すので、通訳の芸ちゃんも、
「このギャグは通訳する価値がない!」
と、通訳拒否までされる始末。
まずい、このままではユーモアとウィットを紳士の条件とするイギリス人に嫌われてしまう・・・。
困っていると、ジュリーがイギリスのジョークを教えてくれた。
要約すると、
「蠅(英語ではフライ)がスープに入ってしまった。蠅は何をしていたか? バタフライである」
しかし、このジョークをみんなが理解するまでに10分もかかってしまった。
「イギリス人のジョークは難しいので日本人にはあまり理解されない」
と、ジュリーがぼそっと言った。
・・・フライがスープでバタフライ。
こりゃ日本のダジャレと一緒じゃないですか。ジョークが難しいんじゃなくて、私たちの英語力がないだけだって。
そんなまったりした空気を打ち破るように
「ありましたありました! 国際的なギャグが!」
と、佐藤さんが言い放った。
「ヒトラーとゲーリングとヒムラーが乗った飛行機が落っこちました。生き残ったのはだれでしょう?」
「???」
誰も答えが分からない。
「正解はユダヤ人です」
この意味わかります? 
ユダヤ人を迫害した代表的人物が全員死んでしまったということで・・・。 
 このジョークには、ジュリーも
「おー、インターナショナル」と、感心していた。
よかった。これでかろうじて日本人の面目は保てた。

 翌日の一月三日、2日間を共にしたジュリーともお別れし、『風のたより』一行は京都へ向かった。
途中、太秦(うずまさ)で東映映画村に寄る。ディズニーランドの次に『風のたより』に似合わない所である。
ここですごかったのが「銀河鉄道999」の映画である。鉄郎とメーテルが旅をするのはいいんだけど、富士山や新幹線の上空を999が飛んで、最後には映画村へ降りるという、終わった後には、皆口もきけないほど複雑な思いにかられる映画だった。

 ぼーっと歩いていると、ふいに皆の姿を見失ってしまった。ぐるぐる探し回っても『風のたより』のメンバーは誰もいない。
あ、やばい。まさか私、迷子になってる?
どうしよう。あのお姉さんに迷子放送をかけてもらおうか・・・
いや、ここでその手を使ってしまったら、あと30年は
「26にもなってお迎えに来てもらった」
と、言われてしまう。ここは我慢だ。
・・・それにしても皆どこにいるのー? 
26にもなってつくづく情けないことであった。

4人のインド人

 『風のたより』一行が泊まった京都・宇多野YHには、いつもたくさんの外国人が泊まっている。
夕食の時、ベジタリアンなので、肉を食べられないと、困っているインド人がいた。
こういうときは、ササラーこと笹川さんが強い。彼女は大学でインドの言葉を習っていたのだ。ウルドゥー語の会話でささっと問題解決。ササラーが実にかっこよく見える。

寺田屋(京都)にて
 それをきっかけに、4人のインド人と知り合いになった。彼らは、
コンピューターの研修の為、日本に来ているそうである。失礼ながら私は、インド人は皆、毎日カレーを食べて、ガンジス川で沐浴して、アラーの神に祈っていると思っていた。だから、インドにコンピューターで有名な州があり、インドの会社で、アメリカのコンピューターソフトを作っているなんてことを聞いてびっくりした。
考えてみれば、核実験だってしている国なのだから、有能な科学者やコンピューター技師だってたくさんいるにちがいないのだ。
彼らは京都の寒さで風邪をひいてしまったらしい。
私は心の中で思った。
「やっぱり肉たべなきゃ風邪ひくよ。肉たべなきゃ、体力つかないって」
しかし、彼らはきらきら光るお目目で言うのである。

「私たちは宗教上の理由でベジタリアンなのではないです。動物はかわいい、だから私は殺したくないのです」
「・・・」
そういえば、天の橋立で会ったジュリーもベジタリアンだった。それも、やはり動物を殺したくないからだという。

 うーん、同じ様な年で、彼らの方が私よりよほどエネルギッシュで、がんばってて、語学堪能(インドでは国内だけでも 149の言語と450以上の方言があるそうだ。公用語だけでも15個もある!)なのにベジタリアン・・・。
私ってずいぶん無駄に食料を消費しているんだなぁ、としみじみ感じた。

 4人の中にスニラさんという唯一の女性がいた。スニラさんと、ササラー、福田さん、私とで、インド音楽のカセットテープを聞きながら夜更けまで話をした。女の子だけだから、当然恋愛の話も飛び出す。スニラさんは1月にインドに帰ると、3人のお見合い相手が待っているのだそうだ。
私たちが、きゃーきゃーひやかすと、スニラさんははずかしそうに顔をおおって笑っている。ちょっとシャイで、いつもおだやかにほほえんでいるスニラさんを見ていると、なんだか日本人に近いような気がする。

 インド人といっても、地方によってずいぶん違うそうで、私が本などで読んでいた、ずるがしこく、したたかなインド人のイメージ(インドのカルカッタを訪れたバックパッカーの旅行記には、大体こんなことが書いてある)とは全然違うのであった。

 英語、ウルドゥー語、日本語、ボディランゲージをまぜこぜにした会話はゆっくりと進む。
昔のインドでは、夫が死んで火葬にされると、その妻も一緒に火に入り死ななければならないという習慣があった、と、英語の教科書で読んだ記憶がある。
「今でもそういう習慣って残っているのでしょうか?」
「公的には無いことになっているけれど、田舎の方では、今でも実際行われている所はあります」

 インドは男性社会らしく、女性が結婚するとき、大量の持参金を持っていく風習があり、これも、政府はやめましょうと言っているのだけれど、まだまだ根強く残っている風習なんだそうだ。離婚が少ないのも、女性がその後、経済的に暮らしてゆけないパターンが多いからだという。

 片方では古い習慣が残っていて、カースト制なんていうものも存在していて、でも、コンピューター技師を日本に長期留学させたり、大都市も田舎も、 たくさんの言語も、インドという国は、ほんとうにいろいろなものを持っている国なんだなぁと思った。
スニラさんの言葉一つ一つが私には刺激的だった。びっくりしたり、同じ感情を持っているってことが分かった。

「生き方のことや、友達のこと、結婚のこと、日本人とこんなにいろいろ話したのははじめてです。
会社では仕事の話ぐらいしかできないから、今日はとても嬉しい」
スニラさんはそう言って、私たちにインドのカセットテープをプレゼントしてくれた。
私も同じ気持ちだったので、天の橋立神社でもらったウサギ柄のお皿を、スニラさんに贈った。

 いつの日か、インドにあるスニラさんの会社に、『風のたより』隊のインド会社訪問ツアーを出すのだ! と彼女の笑顔を見ながら私は決心した。
【栗原智子】

日程

12月27日:国立民族学博物館見学、美山ハイマートYH泊。
12月28日:美山見学、美山ハイマートYH泊。
12月29日:福知山・城崎見学、浜坂YH泊。
12月30日:鳥取見学、浜坂YH泊(地元の人達とパーティー)。
12月31日:天橋立へ。天橋立YH泊(年越し)。
1月1日:天橋立・伊根見学。天橋立YH泊。
1月2日:天橋立散歩・京都映画村見学。宇多野YH泊。
1月3日:伏見・京都見学。宇多野YH泊。
1月4日:大津の三井寺見学。解散。
『風のたより』 SINCE 1992.3.1 
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