六つ星山の会共催ツアー・鹿倉山縦走

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六つ星山の会共催ツアー・鹿倉山縦走

 今日は六つ星山の会との共同山行の日です。朝、空を見上げると、ぬけるような青空です。昨日の嵐がウソのようです。さあ、出発だ!
 集合場所の立川駅に私が到着した時、すでに数人の六つ星の方々が待っています。やがて集合時間が近づいてくると、1人2人とどんどん人数が増えてきます。知らない人も大勢いましたが、前の山行で一緒だった人もいます。再会を懐かしむうちに、やがて歩登寿さんもきました。さあ、どんな1日になるでしょうか?

 真っ青な空の下、秋風もさわやかに、電車では、ぽかぽかしてついうとうとしてしまいます。奥多摩駅で路線バスに乗り換え、一路鹿倉山を目指します。バスの中では今日の無事を祈りつつ、私は土井さんとささやかにビールを酌み交わします。しかし、六つ星の方からは、

「今から山に登るのに、よく飲むねえ〜!」
「私なんか今飲んだら、心臓がドキドキになってしまうよ!」
な〜んて言われてしまいました(苦笑)。
 いや〜、『風のたより』では当たり前の事なんだけれどな・・・・?
 まっ、登山は旅である『風のたより』ならではですが・・・・。
 そう言えば今回は珍しく『風のたより』隊は男だけです。これは男の友情を深めるチャンスと思いましたが、歩登寿さんたちは『風のたより』の女性諸君がいなくてがっかりのようです。しかし、六つ星さんには大勢の素晴らしい女性の方々がいるではないですか! そんなにがっかりしたら、失礼ですよねえ(笑)。しかし、前日の天候がうそのような空です。山々がとても美しく見えます。もうすぐ12月というのに歩き出せば汗が出ます。 植林されたばかりの木々の中、隊を2つに分けて進みます。最初は静かにしていた『風のたより』隊ですが、土井さん、芸ちゃんといった歌好きのメンバーがいつまでも黙っているわけはありません。みんな歌い出します。しかし、六つ星の方々は黙ってらっしゃいました。

 びっくりなさったのか?
 それとも、あきれているのかな?
 まずかったな! やっぱり静かな山の中、大声で歌うなんて。
 もし、六つ星の登山スタイルが、

「静かに森の音や小鳥のさえずりを聞きながら登る」

というスタイルだったら、気分を悪くされるだろうな?

 やはり、六つ星の方々は黙ってらっしゃいました。
 歌うのは『風のたより』隊たちだけ。
 ど・どうしよう?

 その時、歩登寿さんが歌ってくれた。
 最初は、歩登寿さんだけだったのが、
 時と共に2人、3人と歌声がかさなってゆき・・・・。

 風が吹きました。
 木の葉が揺れました。
 真っ赤に紅葉した落ち葉が道に絨毯を作っています。
 歌声は、山一面に響いていました。
 
ほっとしました。
 一緒に楽しく登りたい・・・・という気持ちが通じたんだ。
 歩登寿さんの奥さんが、視障者のサポートして下さいと言います。
 「え? いいんですか? 素人の私たちにまかせてしまって・・・・」
 と思いつつも喜び勇んでサポートにつきます。
 歩登寿さん、は・速い! 皆さん目が見えているのかな?
 山を知り尽くしている兎のように登ります。
 私たちは、必死に追いかけるだけ・・・・。思わず焦ってしまいます。しかし、歌声は途切れません。肩で呼吸しながら続きます。
 古いアニメソングがでてきました。
 岩下君の歌声が響きます。彼はこの系統の歌はめっぽうよく知っています。

 歩登寿さんは言われました。
何だか昔の映画だったろうか。軍隊で若者達が行進している臍中に1人、2人、3人と歌が飛び出して、それが隊列全体で大合唱となってミッチミラー合唱団の如く足音と歌が調和して若者のすがすがしさと相まって、進んでいく光景を見たことがあるがそれを髣髴させるような「風」の若者達にダブって感じてしまって、若さの素晴らしさを否が応でも痛感した。
【歩登寿】

 一方、「六つ星」のグループは何だか毒気を抜かれたのか、年齢の差なのか「風」の若者達の歌を静かに聞いているだけでだれ1人歌おうとはしない。それはそうだろう。登るだけで精一杯でとても歌など出るものではない。急な登りにも関わらず、息も乱れず音程も確かに歌う「風の若者達のまねなどはとても出来るものではない。 それに普段の山行スタイルと余りにも違っていたので、最初はビックリしたのかも知れない。

 共同山行の打ち合せでは、六つ星の方々は、昼食は1時間くらいにして、時間のかかる料理を避けるようにと申し出られました。私は、彼らに合わせるつもりでしたから、その通りにしようと思っていましたが、編集スタッフに相談すると、「それじゃ駄目だ」と言われました。

「どうして?」
「六つ星の度胆をぬかなければ・・・・」
「え!? どうやって?」
「重いっきり派手で豪勢な鍋をやろうよ! 時間のかからない鍋ならいいんでしょ? オデンなんかどうかな? 寒い山なら、体が芯から温まるし」
「そうか、オデンなら酒もおいしいな!」
「君は、飲む事しか考えてないの?」
「あたりまえじゃないですか、よし、1升瓶をもっていくぞ!」
「瓶ごと?」
「瓶ごとです!」

あきれられてしまうかなと、大鍋からあふれんばかりの具を見ながら思っていました。
しかし、湯気の立ったオデンを配り始めると、皆さんおいしそうに食べてくれました。
おいしそうに食べてくれる姿を見て、わくわくします。

やがて、土井さんのキーボードも出てきて、山頂は歌と酒が飛び交い、とてもこころあたたかく楽しい時が過ぎてゆきます。
歩登寿さんが、はしゃぎまわってくれます。
あれれ!? 飯田君と私は話します。
「ソハラ〜、まるで土井君の未来を目の当たりにしているようだよ!」

真瀬之内君(高橋君)と芸ちゃんもはしゃぎまわっています。
石川君はガスの火をじっと見つめたまま・・・・。
1升瓶の他にもビールやらワインやら出てきます。
みんな〜、どうしてこんなに持っているんだ〜!

ここで共に参加した芸能人さんのコメントです。
実のところ参加してみるまでは、大変失礼な話なので恐縮なのですが、「六つ星の会」って障害者の方々の会だからボランティアしなくては、などという気負った気持ちだったんです。ザックの後ろにロープをつけて、市角さんのサポートをしているときもそういう気持ちでした。ところが、いっしょに酒を飲み、歌って踊っているうちに考えは変わりました。あー、この人たちは仲間だ。心の底からそう思えました。
目の不自由な人は耳が頼りだし、風の音、鳥のさえずり、川のせせらぎ、を聞きたいだろうと思って初めのうちは歌を遠慮していたのですが、市角さんは歌ってくれと言うし、歩登寿さんも大声で歌っているのでこころおきなく歌えました。下り道ではもう大狂乱状態でしたね。
歩登寿さんの、人の心を包み込むような度量の大きさといい、あの酔っ払いぶりといい、僕は、歩登寿さんのファンになってしまいました。みんな素敵な人たちでした。
【土屋達郎】

空が赤く染まってゆきます。下山にも関わらず足取りは軽やかです。登りにも増して歌声が響きます。
ふと気がつくと、私は、歩登寿さんや他の方々が障害者であることを忘れていました。というより、とても、障害者なんかに見えません。
歩登寿さんは、歌好きの人で、酒好きの人で、踊り好きの人で、ドンチャンが大好きで、そのうえ人間が大好きな人です。

なんだ、私たちと同じじゃないか!
もっともっと、一緒に山に登りたいと思った私たちです。

【曽原正俊】

『風のたより』 SINCE 1992.3.1 
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