2回目の大キレット

御案内 お知らせ 活動報告 紹介画像 メッセージ スタッフ 資料集 その他
■活動報告1
 ・槍ヶ岳・表銀座を縦走する
 ・三雲町へ行く
 ・白馬岳ツアー
 ・松浦 武四郎伝(旅人の歴史)
 ・お盆ツアー槍ヶ岳・大キレット
 ・六つ星山の会共催、鹿倉山縦走
 ・富士山へ行きませんか?
 ・富士山ツアー・樽
 ・松浦武四郎記念館で公開
 ・年末年始歴史ツアー近畿編
 ・山に行けたよ!
 ・谷川岳に行く!
 ・浅間山に行く!
 ・トムラウシ山に行く!
 ・武甲山に行く!
 ・官ノ倉山に行く!
 ・丹沢山に行く!
 ・鷹ノ巣山に行く!
 ・仙ノ倉山に行く!

■活動報告2
■活動報告3
■活動報告4
■活動報告5

トップへ

2回目の大キレット

久しぶりの上高地。清々しい朝の道を歩きながら、私の目は点になっていた。

「えっ? 大キレット? 大キレットに行くんですか?」
「うん、そうだよ」
「え、でもでも、表銀座じゃなかったんですか?」
「いやぁ、変更になってねー、はは」
「そんな〜・・・・」

出発の朝、初めてコースやメンバーを聞いた私は、大キレットと聞いてドキドキしてきました。大キレットと言えば、地図に「危険箇所・滑落注意」と書いてある難所です。今回のツアーは、そこをテント泊・自炊の重装備で、しかも26人の大所帯で越えて槍ヶ岳へ向かうという大計画でした。

「前田さんは3年前にも行ってるから大丈夫だよね。あの逆コースだよ」

と、土井さんはニッと笑います。

私が生まれて初めて縦走したのが、同じコースでした。見たこともないような岩山を前に、岩登り教室をしてもらって、落ちたらヤバそうな絶壁を助けられながらトラバースして、自分には別世界だと思っていた山と、思う存分仲良くなれた気分でした。なんて面白いんだろう〜、高いとこも結構大丈夫なんだなぁ、絶対にまた来たいなぁ〜と、その時は思ったものでした。

 し・か・し、本当にもう一度行くとなると、ちょっとたじろいでしまいます。切り立った絶壁から見た深い谷や、なかなか足が届かない長い鎖場、大変そうな所ばっかり頭に浮かんできては、あの時は空身だったしー、山小屋で3キロ太ったしー、3才年とったしー、とついつい弱気が出てきます。
しかし班編成の時、佐藤さんは言いました。

「初心者の女の子は先発隊。栗原さんや前田さん達ベテランは、大丈夫だからボッカ隊かテント隊、どっちでも
入って」
 えっ?!
 私達ってベテランなんですか???
 う〜。これはハテナ?
 だけど、初めての人たちもいるんだし、こりゃ弱音を吐けません。初参加の女性陣からも
「明日のコースってどんな所ですか? 怖いですか? 」

よく眠ってます (^^;
と、大丈夫かなぁ? という感じで聞かれます。
こりゃいかん。初めての人の方が不安なんだから、私達が不安を言ってる場合じゃないですね。
「どんなに高くても足場はしっかりしてるから、目の前の一段を越えるつもりで行けば大丈夫 ですよ」
なんて、昔のことを思い出しながら、自分にも言い聞かせました。そうだ、大丈夫。昔の私が大勢いる。明日は皆と大キレットを越えて槍へ登るんだ。皆きっと喜ぶだろうなぁ〜。
けれどその前に、まずは自分の面倒をちゃんと見ようと、夜はしっかり食べて、しっかり寝て、体調を整えることにしました。

大キレットへのスタートは、標高3100メートルの山の切っ先にそびえる、北穂高小屋です。ここから急な岩場をガンガン下って最低鞍部まで行き、再びゼーゼー言いながら、南岳まで登るのです。
北穂のテラスからは、明日登る予定の槍ヶ岳や、遠く立山連峰まで見えて最高の眺めです。でも先発隊が出発する頃になると、ガスが出てきて谷の方は見えなくなりました。

「いってらっしゃ〜い!」
「気をつけてー」
「はぁーい、いってきま〜すっ!!」

 先発隊の初参加の女性陣は、とっても元気。白い世界に姿が見えなくなっても、きゃー、きゃー笑う声だけが聞こえてきます。 その声が遠くなるのを聞きがら、私は、ザックや靴をがっちり固め、福田さんや芸ちゃんたちと準備体操をして、気持ちを整えました。

ふぅ〜、さぁ、いよいよかー。
準備万端整った所で、2班も慎重に白い谷へ降りて行きました。
よしっ。

3年前に来た時はお盆だというのにガラガラで、独り占め状態でしたが、今年の大キレットは大繁盛で、鎖場や難所では順番待ちで渋滞していました。右も左も絶壁の岩場や鎖場は、ひとりずつ進みます。
前を歩いている土井さんは、でっかいザックを担ぎ慎重に進んでいます。
ザックの重みで一歩一歩がズシッ、ズシッという感じです。毎度のことながら、よくこんな荷物で岩場を登ったり下りたり出来るなぁと、超人を見る思いでした。

 滝のような汗を流しながら、2班の先頭を行く土井さんは真剣でした。
先発隊の佐藤さん、後発隊の下薗さん、テントやら食料など、装備のボッカをしてくれた他の皆さんも似たような感じだったのでしょう。
ああ、同じだなぁ。
3年前も今も変わってない。
皆と一緒だからこそ、こんな所に来れるんだなぁ〜。
同じ道を通って、ふとそんな風に思いました。

そうして、しみじみしながら、緊張しながら歩いていると、

「おお! ここだ、ここだ、この木懐かしいなァ〜」
「たしか前は、ここの絶壁で助けてもらったなァ〜」
「お、道が変わってるぞ」
という懐かしい場所がどんどん現れてきます。

 本当にもう一度来たんだー!
皆元気だったか〜?
と声をかけたくなります。怖いはずだったのに、いつのまにかニヤニヤしながら歩いていました。

振り向くと、皆もゼーゼー言いながらも楽しんでいるようです。渋滞中の待っている時間なんかは、景色をゆっくり見れるチャンスです。一生で何回と見られない景色ですから、空気の香りや風の感触も忘れないように全身で受け止めます。
そんな時、かかっていた霧がさぁ〜っと晴れて、深い深い谷が姿を現しました。

「おぉ〜っ」
「すご〜い!」
「こんなに高い所だったのかぁ〜っ」
「ひょえ〜、こわいよ〜」

こわいよーと言いながら、皆の顔はウキウキしています。こんな所に来れたんだ、こんな景色が見れたんだ、
というワクワク感でいっぱいです。
こういう時に幸せだなぁ〜って思っちゃいますね。これだから山は辞められません。初めて来た人も、すっかり山にハマッてしまったようで、皆さん最高の笑顔でした。

今回2回目の大キレットに来て、面白い気分でした。昔と変わったところもあるし、変わってないところもありました。
私も昔と全く同じではありませんし、メンバーもそうです。でもやっぱり皆で山に行く時の雰囲気は、昔と変わってないなぁ〜、あったかいなぁ〜と思いました。
まるで、いつ迄も変わらない、ふるさとを見つけたような気分です。この先、いつ迄もあってほしいし、大切にしていきたいと思いました。
最後に。あんなとこに2回も行けるとは思ってませんでした。最高です。
皆さん、ありがとうございました。また行きましょう!
【前田充代】
『風のたより』 SINCE 1992.3.1 
トップへメールサイトマップリンクメーリングリスト購読申込掲示板